新曲”Circulate Back”

去年の11月~12月頃、レッドベリー、エルモア・ジェイムス、デイヴ・ヴァン・ロンク、O.V.ライト、ニーナ・シモンなど、1930~60年代の古いブルースや、トラッドフォーク、ソウル、ジャズなどをよく聴いていた時期がありました。著作権の切れた曲のカバー候補を探していたんですが、その時古典的なメロディーの曲を自分で作りたくなり、それをループでアレンジ出来ないかと考えていました。

ループとはヒップホップなどでよく使われる手法で、要は同じフレーズをひたすら繰り返す楽曲です。コード感のないループはメロのないヒップホップとは非常に相性が良く、独特の雰囲気ある曲になります。

ロックでも有名所ではレディオヘッドがコード感のあるスタンダードな楽曲から、無機質なループをベースに展開させる楽曲にシフトチェンジし、大幅にシンセや打ち込みを取り入れるようになりました。今ではオーソドックスな手法の一つですが、それを古典的なメロと合わせたらどうなるのか試したくなり、まずはこの曲から取り掛かる事にしました。

結果、2コードのループ(厳密にはループじゃないですが)をベースに音が加わっていく形になりました。極力シンプルに作る事を心掛けたので演奏は単純そのものですが、不協和音ぎみのチェロのフレーズがこの曲の肝になってます。転調してからのアンサンブルがイメージ通りにならず、楽器や音色を変えて色々試したものの、結局アンサンブルの問題でなく、定位と音量バランスを大幅に変えたらあっけなく解決しました。

ベースだけ最小限コード感のある動きをつけ、ドラムはR&Bっぽい音色でキックを重くし、キック主体のループにしています。主旋律はシンセリードですが、この曲ではシンセは主に聞き取れない音で雰囲気を作ってます。

これまで自分が良いと思えばジャンルの枠に捕らわれず、幅広くロックというくくりで曲を作ってきましたが、この曲を完成させた事で更に新たな領域に踏み込めた気がします。でも次はもっとロックな曲をやります。

マスタリングはWaveLab Pro 9を使用しました。自分で行う最初の本格的なマスタリングなので随分時間が掛かりました。家のスピーカーで聴き、ヘッドホンで聴き、車のスピーカーで聴き、圧縮してiPodで聴き、大きな音で聴き、小さな音で聴き、どこかで聴こえ方がおかしければやり直し。その繰り返しで完成したのはようやく昨日です。

一度出来てしまえば何が問題だったかが全部分かっているので、次からはもっとスムーズに行えると思います。色々試した結果、WaveLab側ではリミッターとディザーのみを挿して、音作りは全てPro Tools側のプリ・マスターで決めてます。全てを自分でやるからこそ問題があった時に、2MIXやプリ・マスターの段階から納得いくまで何度も作り直せるという強みがあります。

アナログ・アウトボードを一切通さない100%デジタルな音ですが、トラック一つ一つに丁寧にエミュレーター処理を行い、2MIX全体にも処理を施しているので、それほどデジタル臭を感じずアナログ感のある仕上がりになっていると思います。

“Circulate Back”は曲単体でダウンロード販売・ストリーミング配信をしますが、多分一年間の限定になると思います。サンプル音源には古いレコードのようなダスト・ノイズを混ぜてフル視聴出来るようにしています。気に入った方はノイズのない綺麗な音源を聴いて下さい。値段は最も安い設定なので、iTunesだと¥150、Amazon Musicで¥100です。詞はリンク先に掲載しています。

ジャケットは大失敗でした。以前70~80年代の洋楽のジャケはダサいのが多いと言った気がするけど、何というブーメラン。天秤のサイズが小さすぎて、どの構図にしてもチープさが止まらない。かつて円谷英二は『火と水はミニチュアにできない』と言ったそうですが、ミニチュアに相応の質感を与えるのが容易でない事がよく分かりました。今回は時間がないのでこれで強行します。どうせ配信専用のジャケなので。

Circulate Backの音源はこちらです。

Masaki Aio

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