新曲”Let It Wet”

久し振りのブログ更新です。

只今3rdアルバム制作中です。ようやくアルバムの核になる曲が完成しました。制作期間は8月の盆休みから休日だけに集中して凡そ40日ほど。8~9月は祝日が多かったので、この形になるまでアイデアを煮詰めても、予定より早く完成させる事が出来ました。仕事をしながらだとこれが限界です。人の集中力とエネルギーには限りがあるので、出来栄え重視で集中出来る時にしか今は作らないようにしています。

今回からレコーディングは今まで以上に元音を良く録る事に注意して、EQはドラム以外は僅かな補正程度にしか使わないようにしています。声も楽器も元が良ければ下手にいじらない方が良いという結論に達しました。12インチのキャビネット導入でギターの音はより良くなり、去年の年末に導入したアナログシンセの実機もキャビネットで鳴らした音を録音しています。

ミックスはいつも2MIXではバランス良く聴こえるのに、マスタリングになるとバランスが崩れ、音も潰れていたので、今回からはやり方を少し変更しました。デジタルならではの有効な手法を思い付き、それがうまくいったので、今までよりはミックス~マスタリングで手応えを感じています。

今後アルバム用に作る楽曲に関してはまだ手直しをする可能性があるので、アルバム完成までは公開する予定はありません。これまで作った4曲も”The Wailing Bell”以外はアルバムに収録予定なので、今の感覚でアレンジやミックスを手直しをする事になります。

しばらく新曲のアップは出来ませんが、今回の曲は途中まで視聴可能です。曲が盛り上がってくる一番良い所でぶった切ります。これまでは音源にノイズを混ぜてフル視聴出来るようにしてましたが、今後はフル視聴もストリーミング配信も一切やるつもりはありません。(ダウンロード配信は一旦整理してから再開します)

Spotifyや定額ストリーミング無制限は、音楽が売れなくなった時代の最後に業界が落とした爆弾です。それで業界の首を繋ぎ止めた代わりに、従来のシステムは放棄されました。ミュージシャンとレーベルとの共依存関係も崩壊しました。所詮従来の音楽など産業ビジネスの一環です。利権を生まなくなればビジネスのシビアな側面だけが残ります。元からそうだったものがより露骨になった感じです。ミュージシャンはもうライブでしか稼ぐ事が出来ない時代です。

こうなった今こそ新しい音楽の在り方が問われています。色んな音楽の一環として商業音楽は世の中に必要でしょうが、そこに属さない音楽が将来この状況を引っくり返して欲しいものです。本当に人生懸けて音楽を作っている人が今どれほどいるかは分からないですが、それは誰かに奪われるものであってはなりません。でも奪えない音楽には知名度も与えられない。だから別の手段で自分が何者かになる他ありません。

これまでミュージシャンは大金を稼いでやりたい事をやりたいようにやってきました。でも本来表現者は金持ちになどならない方がいいです。満たされれば才能は枯れ、ロクなものが作れなくなります。その反面それだけで生活出来なければ相当な労力が必要になり、生涯に作れる曲も、超えられる壁も半減します。それは才能の損失です。辿り着けるべき領域へ至るより先に死が訪れます。

以前、『仕事をしながら音楽を作る今のスタイルのままであって欲しい』などと、人の気持ちを逆撫でするような事を私に言った人がいましたが、所詮それはクリエイティブな制作の事など何も分かってない人間の意見です。でなければ単にそういう願望なんでしょう。無名である現状に傍から見て安心は出来ても、特別な存在になれば羨望せずにいられなくなる。足掻き苦しむ自分の姿を眺める分には内心納得いくけど、登っていく様を見上げるのは悔しい。音楽もタダなら貰うが買いはしない。それは妬みが機縁の『そのままでいて欲しい』という願望です。でなければ単に無関心なだけでしょう。

今回の曲を作り始めたのは8月からですが、制作前も製作中もメンタルはかなり酷いものでした。それでもこの楽曲をこのメロディーで完成出来たのは、あの時断捨離を敢行したからです。以前の自分では作れなかった曲の形です。去年の夏に作った”Break Down The Wall”も一つ壁を超えた筈の曲だったんですが、アレンジが不完全で全くそうは聴こえないものでした。今なら足りない音を足してミックスをやり直し、本来意図した形にする事が出来ます。きっと全く違う聴こえ方になる事でしょう。これも断捨離の効果です。迷いが音に出て突き抜けられずに留まっていました。

音楽には作る人の人間性や精神性が滲み出ます。それが誰かの模倣である内は感じるものも誰かの影ですが、独自のスタイルを確立すれば、その人自身が自然と投影されます。誰かのような音楽を作る分には、既にあるものをインスピレーションの拠り所にすれば済む話ですが、自分だけのモノを作るには自分の精神が拠り所です。突き抜けたものを作るのはそれを特殊な領域に研ぎ澄まさねばなりません。でもそれは一般的な人付き合いの中で、自分が折り合いを付ける度に凡庸に鈍っていきます。

伝統的にロック・ミュージシャンはドラッグの力を借りて、本来の自分では作れないものをこれまで作ってきました。が所詮そんなものはアクシデントのようなものです。シラフで特殊な領域に辿り着かねば人が作る意味がありません。この曲は今の私の現在地です。でも聴けるのは途中までです。カットされた後に続く美しい展開は、アルバムが完成した時に、音楽好きな人だけ買って聴いて下さい。

Masaki Aio – Let It Wet 【スマホの視聴はListen in browserをタップ】

Masaki Aio

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