近況報告

正月休みから新曲を二曲作っています。以前から作りたいと思っていた日本語の曲です。

洋楽ロックを聴いて音楽を始めた人なら分かる話ですが、ああいうリフや楽曲主体の音楽にハマるメロディーは日本語との相性が絶望的に悪いです。

ロックに限らずヒップホップやシャンソンやオペラも同様です。

日本語の韻とアルファベットの韻は全く異なり、日本語にはちゃんと日本語に適したメロディーがあります。だからそこで最初の選択肢を迫られます。

  1. 日本語に合うメロディーを柱にして、楽曲はそれに合わせたものにする。
  2. 邦楽ロックのように日本語を無理やり崩して、英語も交えてそれっぽく歌う。
  3. やりたい音楽に妥協しない。

私は曲を作り始めた当初は日本語ベースで書いていましたが、限界を感じて途中で英詞に変えました。上京して最初のバンドも全曲英詞。最後のバンドも最終的に全部英詞になりました。

1stアルバム”Nostalgia”では3曲を日本語で書きました。『五月の雹』は純然たる日本語の曲ですが、他の二曲は英語のメロを無理やり日本語に作り換えた失敗作でした。

だから去年作り直した”Nostalgia (2021 Remake)”ではこの二曲は英詞に書き換えています。

3rdアルバムの『祓神楽』は枕詞を用いた呪詛の祝詞ですが、楽曲主体の曲ではないので日本語が乗せやすいメロディーでした。

古語だったので尚更合わせやすかったです。少し異質な曲になりましたが日本語の曲を本格的にやろうと思うきっかけとなりました。

これまで私は自分がやりたい音楽に妥協しない為に英詞を選択し、英詞を選択した事で自分の音楽に瑕瑾を与えてきました。私の英語は独学で身に付けたものだからです。

英語の言い回しの表現は日本語とは全く違い、直接的な表現ほど退屈になります。それを考える作業は楽しいもののネイティブな人と触れ合った事がない私の英語の表現力や発音にはやはり問題もあり、それが自分の音楽の完成度を下げているという自覚もありました。

それが自分の音楽のネガティブな要素ならやはり日本語で完全なものを作りたい。日本語の言霊を音に残したい。今までやりたかった事を十分に形にしてきた事で、かつて自分を縛っていた拘りからも今は自由でいられる。

今の自分になら妥協ではない日本語の良い曲が書けるかも知れない。そう思えるようになりました。それで年が明けたら始めようと準備をしていました。

今レコーディングの最中です。一曲は古語主体の日本語の曲。今様に根付いたメロディーとマイナー調ブルースの融合。実験的な曲です。

もう一曲は日本語と英語混じりのスタンダードなロック。コーラスは日本語では難しかったので英語にしています。この二曲に関してはただ想いを吐き出しています。そうする必要があったからです。

私は人生の大部分を音楽に費し、でもそれだけで生きていく事は出来ず、自分の家族を持たない代償と引き換えにこれを続け、自分の時間を捧げ続け、その結果誰よりも価値というものを理解し、その私が客観的に判断した上でこうはっきりと断言する事が出来ます。

『俺の音楽はやはり凄い』
『俺の歌はやはり凄い』

だからこそ既存のレーベルから出てないというだけで軽く見ていたかつての知り合いや友人に対する残念な思いや、痛み、怒り、軽蔑をこの二曲に吐き出しています。それらと決別する為に。

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