(What’s The Story) Morning Glory?

オアシスの名盤『モーニング・グローリー』がこの度リマスターされたので買ってみました。

『なるほど、これがリマスター詐欺か』

ジミヘン、ストゥージズ、Tレックスのリマスターには心が震えたものです。旧盤と比べて格段に音が良くなっていました。ピストルズの2002年の輸入BOXもオリジナルのアナログ盤に近いと評判だったし、ビートルズのリマスターもオリジナルのアナログ盤の再現を目指したものでした。

でも元々デジタル用のフォーマットで作られた90年代以降のリマスターには注意が必要です。元のマスターから格段に音が変わらない場合もあります。試しに320kbpsに圧縮して音量を揃えたら大した違いもなくなる。

Some Might Say や Cast No Shadowのイントロのギターは確かに良くなってるけど、基本的にオケが混ざればどの曲も旧盤との違いはたいして感じられくなってしまいます。

CDが売れない今の時代にCDを買うのは最早希少な絶滅種たち。そんな滅び行く種をターゲットに絞ってレーベルは名盤をリマスターし、未発表バージョンや中途半端なライブ音源も足して2枚組、3枚組にして高額で再発します。

絶滅種たちはリマスター・ホイホイにワサワサと群がって、限定とも銘打てばみな容易く捕まるのです。そしてバンドやレーベルは昔のカタログで楽して大金をゲットします。

しかし考えてみれば一番音が良かった規格はビニール盤のアナログレコード。それがサイズがより小さく、傷が付きにくく、74分収録出来るCDに移行。 44.1kHz/16bitのデジタル規格に圧縮するので音質はアナログより劣ります。

更に今度はよりデータを小さくした圧縮音源に移行。現在iTunes Storeで販売されているビットレート256kbpsはCD規格の凡そ1/5.5のサイズです。

ハードが進化していく程に音質は劣化していき、音に拘るマニアはレコード盤の再現をCDに求めてリマスターに手を出し、更に音にこだわる人は未だにアナログレコードを聴いている。

個人的には音楽はロックにしろクラシックにしろ、良い音をある程度デカイ音で聴かないとダイナミクスやダイナリズムが体感できず、曲の良さが分からないと思うのですが、きっともう誰も音楽にそこまで求めてないんでしょう。

何より良い音をデカイ音で聴けるような環境がない。30年前のように巨大なオーディオセットが一家に一台あって、騒音など痛み分けという時代はとうに過去のものです。

地下の防音室に大型スピーカーを設置して、高級アンプでワイン片手に大音量のレコードを楽しむなど、一部のブルジョアだけに許された贅沢で生意気な道楽です。庶民はみなヘッドホンをすりゃいいじゃないか。

そうしてみると圧縮音源はやはり今の時代に適したツールなのでしょう。実際128kbpsの圧縮ならともかく、320kbpsの圧縮音源とCDを同じ音量にしてブラインドテストをしたら、音の違いが分からない人が多数だと思います。少なくとも一般的な再生環境では。

そこそこ良いサウンドボードやUSB DAC。そこそこ良いスピーカーに、そこそこ大きめの音量。それで充分に音楽は楽しめる。けどたまに本気で音楽に感動したい時は、本物を大音量で浴びたい時もあります。

※追記(2015.1.25)
『Oasis Morning Glory リマスター』の検索でこのブログの記事に辿り着く人が多いようなので、参考の為もう少し客観的な意見を敷衍します。

音は確かに良くなっています。音圧も全体的に上がっているので聴感上良く聞こえます。ただ音圧の差をボリューム調整で同じにすれば何となく良くなった気がする程度のものです。イントロが明らかにクリアになった曲もあれば、一貫して大差ない曲もあります。

“Wonderwall”, “Don’t Look Back In Anger”, “Morning Glory”などは旧盤と大して変わりません。オアシスのファンで少しでも良い音で聞きたいなら買って損はないと思います。

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